素人志向

備忘録

帰熊備忘録 #1

熊本は東京よりも陽が上ってくるのが幾分遅い。詳細な時間は分からないが、恐らくかなり遅い。そして、実家のパソコンの処理速度はもっと遅く感じる。結局パソコンがまともに動き始めるまでに30分くらいかかった。気のせいだとは思うが、冬の時期は特にパソコンの起動が遅い気がする。気のせいだとは思うが。気のせいであってくれ。

Core2QuadとRAM4GBのパソコンでWindows10を動かすのは中々キツイものがある。しかもSSDは非搭載だ。それでも何となくではあるが、記事を書かなければならない気がした。無理やり老体に鞭を打ってPCを叩き起こし、居間の片隅でカタカタとメンブレンキーボードを叩いている。空はまだ暗い。やはりここは九州なのである。

 

おそらく2年ぶりくらいだろうか、久しぶりに熊本に帰ってきた。現地の言葉で帰熊という。

熊本の中心街で飲み会があったため、ふらっと立ち寄った。ふと、学生時代に立ち寄っていた喫茶店が看板を出しているのを見つけた。

「珈琲 中川」

昼夜問わず、この看板はいつも下通の入り口に出ていた様に思う。当時と変わらず、下通の入り口にある看板を横目に、店がある地下へと進んでいった。

ドアを開けると、カランカランという心地よい音が響き渡る。店内はそこまで広くないが、カウンターとテーブル席があるしっかりとした喫茶店だ。

夕方時ではあったが、既にテーブルはある程度埋まっていた。が、ある程度、なので1席か2席は空いていた。テーブルに腰かけると、忙しそうな大学生くらいの兄ちゃんがメニューとおしぼりを持ってきた。この店には多くの珈琲があるが、自分は「中川ブレンドコーヒー」以外を頼んだことがない。今回もノータイムでそれを飲むと兄ちゃんに伝えた。

珈琲が出てくるまでの間、周りをキョロキョロと眺めてみた。男女2名ずつのグループ、彼、彼女らはこのあと飲みにでも出かけるのだろうか。買い物帰りのカップル、おとなしそうな夫婦がのんびりとした時間を過ごしていた。繁華街の真ん中にある喫茶店だから、色んなお客さんがいるのが面白い。彼らはこの後どうするのだろうか...と思い馳せていたら、珈琲が目の前に置かれた。石川のNIKKOという会社の綺麗なカップに注がれた珈琲が、こちらをのんびりと見てくる。やあ、元気かいと言わんばかりに。

自分は体重は増えたけどそこそこ元気にやっているよと思いながら、当時と変わらない珈琲を飲んだ。思い出補正もあるかもしれないが、やはりここの珈琲は美味しい。色んな思いでも蘇ってきた。楽しい思い出もあるが、今となってはあまり思い出したくない事も珈琲が過去の記憶を無理やり持ってきてしまった。早く忘れなければならないことなのだが、どうしても上書きできない。女々しい男である。

と、過去を思い出して辛くなっても仕方がないので、早々に珈琲を飲み干し、目の前にあるゲームセンターへと逃げ込んだ。

このゲームセンターも学生時代からあった。適当にbeatmaniaをプレイして、飲み会までの時間を潰した。それ以上でもそれ以下でもない時間だった。何か書かねばならない気はするが、あまり思いつかない。

18:00になり、上通、藤崎宮近くの串揚げ屋で串を貪り食った。ビールも飲み放題だったから久しぶりにたらふく飲んだ。昔からの知り合いといろんな話をした。純粋に楽しかった。2年ぶりのくらいの再会だったからか、いつも以上に感動した様にも思う。言い過ぎか?

二軒目はこれもまた昔たまにいってたサブカルバーに顔を出した。酒をたらふく飲んだが、どうしても学生時代の思い出したくない記憶がチラついてしまう。これは別に店が悪いわけでもなく、メンツに対してどうこう言うわけでもなく、個人的な問題なのだ。だからこそ、新しい記憶で上書きしなければならない。早急に、至急、緊急に。熊本という自分の好きな街を、早く新しい記憶で上書きしたい。ただそれだけなのだが...

 

この記事を書いてて、イライラしてきた。どうしてここまで邪魔してくるんだ。さっさといなくなってくれ。頼むから。俺の脳内から消え失せてくれ。

 

酒を飲んだ後、つけ麺を食べてカラオケに行った。好きな曲を沢山うたったが、閉店時間が来てしまった。始発バスはまだ出ないから、また「珈琲 中川」に逃げ込んだ。あの時とまた同じ珈琲を飲んだ。何時までも経っても変わらない珈琲と店の雰囲気が、落ち着くし腹立たしい。ここも新しい記憶で上書きしなければいけないのに、自分にそのパーツが足りない。勘弁してくれ。

 

結局タクシーに乗って帰った。タクシーのおっちゃんと他愛もない事を話していたら家に着いた。結局あの頃と変わらない。どうしたものか。上京してから5年も経つんだが。本当にいい加減、消え失せてくれないか。頼む。